講演内容(細野秀雄先生)

革新的材料の開発と元素選択

細野 秀雄(東京工業大学 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻)

 新機能をもつ材料の開発に携わっているが、何が最も決定的な因子かと問われると、個人的には「元素の選択」ではないかと感じている。以下にそう考える事例を2つあげる。
1. 鉄系高温超伝導体: 大きな磁気能率をもつ鉄は、超伝導の発現には有害であると信じられてきた。実際に銅酸化物超伝導体と同じ結晶構造をもつ鉄酸化物では、超伝導はおろか金属的伝導すら示さない。ところが、酸素ではなく隣の族のニクトゲンを選択し銅系と同様に層状構造をとる物質では、反強磁性が消失し超伝導が発現する。鉄と並ぶ磁性元素であるニッケルでもほぼ同様。
2. 透明 p 型アモルファス半導体: IGZOに代表される透明アモルファス酸化物半導体は薄膜トランジスタの活性層に用いると、アモルファスシリコンの場合よりも数十倍の移動度を示すため、高精細液晶や大型有機 EL テレビのディスプレイの駆動用に実用化されている。しかしながらキャリアの極性は n 型に限られている。いかにして透明 p 型の酸化物半導体を実現するかという研究をかなり長い間取り組んできたが、IGZOに匹敵する移動度をもつ物質は実現できなかった。そこで発想を変え、その指針にフィットするヨウ素化物を対象にしたところ、室温付近で溶液から製膜でき、しかもIGZOに匹敵する大きな移動度をもつ透明 p 型アモルファス半導体 Cu-Sn-I が実現した。
 ❝元素戦略❞のエッセンスは、❝元素選択❞といってもあながち間違いではないと思っている。